偶然見たケーブルテレビで、旧約聖書に書かれているモーゼの「10の災い」は火山の噴火がもたらした異常気象が原因だという話をやっていた。
その可能性はあるかもと思ったが、もひとつ、出エジプトの際の「海が分かれた」という件が、サントリーニ島の大噴火で、一時的に地中海の海水が地下空洞に吸い込まれ、海水が引いたその時のことだ、というのもやっていて、こうなるとこりゃちょっと眉唾だわ、と。
でもそれで思いついたのは、津波だったらありかも、と。南アメリカでの地震の影響で日本にも影響あるようだから、ユーラシア大陸西端のどこかで大地震が起こって、そのため急に海水が後退し海底が露出、その後にどっと津波が来ることはありえるわけで。もちろんモーゼご一行様の移動経路は紅海ではなくて、地中海の海岸沿いをシナイ半島に向かっていたときの葦の原(マンザラ湖やバルダウィール湖)でのことだったようですし。
ま、それがヘブライ人たちの「出エジプト」のときにちょうど起こったというのは、どう考えてもできすぎの話ではあるが、あのころこんな意表外のことあったよね、というレベルで人びとに記憶されていたものが、後世になって「あの時」それが起こった、という奇蹟譚に造られた可能性は十分あるかも、と。
そもそもカエサル『ガリア戦記』で、ローマ兵は大西洋で潮の満ち引き現象に初めて出会って驚いた、ということは、地中海世界では干満は目立たなかった、ということらしいし。
地震にせよ火山噴火にせよ、直撃受けていない遠距離の人びとにとっては、その結果としての天変地異や天災は「神の懲罰」としてしか理解できなかったのは当たり前だったろうし。
新約聖書の福音書に書かれているイエス誕生時の、星の移動に導かれた東方3博士の件も同様で、しかもそれは当時のローマ皇帝アウグストゥスの登場を言祝ぐ吉兆として、前12年のハレー彗星が同定されていたりしているのも、事後予言として「あのころ、こんなことありました」という一般論が、「あの時」と短絡的にイエスやアウグストゥスに結びつけられた、と考えればいいだけのことのような気がする。民族の記憶とはこういうもののような気がする。
こういう問題は史実としてあった、と居丈高になる必要はないと、私は考えたい。
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