古代ロンドン発掘事情:遅報(56)

 以前、ロンドンのCordwainerで、金融・経済情報配信会社Bloombergのビル建設のため1.2ヘクタールの土地を12m掘ったとき、古代ローマ時代の遺跡がみつかった。紀元後60年代前半の町が出てきた、という情報をこのブログでアップした気になっていたのだが、下書きで終わってしまったのだろうか・・・。発掘調査期間は2010-14年(https://data.bloomberglp.com/company/sites/30/2017/11/BLA-web.pdf)。1万4000点を超える出土品の中には、405枚の書字板も含まれていた。これはこれまで最古とされていたヴィンドランダのものよりも50年は古い発見であって、当時のナマの史料として貴重なことはいうまでもない。

 また2009年から進行中の地下鉄工事(42km)「Crossrail」プロジェクトも、考古学にとって大成果をもたらしている由(https://en.wikipedia.org/wiki/Crossrail)。そして2016年2月には、これもビル建設予定地のLime Street、 21番地で発見されたフレスコ画(1世紀末)がMOLAで公表されている(https://www.mola.org.uk/blog/discovery-ornate-roman-fresco-revealed)

この道路の地下6mから出土した由

 かくのごとく、最近古代ローマ時代のロンドン研究は破竹の快進撃中なのである。先のない私としては、誰かやらんかい、と叫びたい気分なのだが・・・。

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過去にEvernoteにコピーしていたものを再発見した:2016/6/6「【国際】英国で発見、古代ローマ時代のメモ帳 「西暦57年1月8日」という日付に書かれていたこととは…」(http://blog.livedoor.jp/waruneko00326-002/archives/47718988.html

 但し、誤訳があるようなので指摘しておきたい。「Venustusの自由民が、Spuriusの自由民であるグラタスという者から105デナリウスを借りました」という文だが、ここで「自由民」と訳されたのは英語のfreedmanだろう。そういう訳をしている英和辞書が多いのだが、これはラテン語のlibertusのことで、奴隷身分から解放された「被解放奴隷」ないし簡単に「解放奴隷」とすべきなのだ。よって上記はたぶん「被解放奴隷Venustusが、Spuriusの被解放奴隷グラタスという者から105デナリウスを借りました」とすべき。

 ついでに私見を述べると、こういった当時のナマの史料では被解放奴隷はもとより、「物言う動物」のはずの奴隷たちすら当然のように商業活動をしている、という現実が判明する。彼らは法的には財産も持てないはずなのだが,実態はそうでない。また解放奴隷にしても、特にご主人様patronus,dominus が商業活動ははばかれるはずの元老院身分の場合、かつてのご主人様の事業を代行していたりしていて、まあ油断ならないのである。こういった件に興味ある向きには、以下は一見の価値あり。

 知の回廊 第90回「古代ローマの裁判」法学部准教授・森光監修・2013/02/03(https://www.youtube.com/watch?v=HrSRmDZ5FYc)  

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