そんな中で、イギリスの社会学・人口統計学・歴史学者のMorris Keith Hopkins(1934/6-2004/3:1985-2000年までケンブリッジ大学古代史教授)は異色だった。まず大学院時代にはMoses Finley教授(1912/5-1986/6:アメリカ生まれだったが、赤狩りで職を追われイギリスに移住、ケンブリッジ大学古典学教授になる)の影響を受けて、社会学研究者として出発。彼は、古代史研究者は研究対象である史料は偏見に満ちているので従う必要はなく、むしろ史料を問い直し、より大きな相互作用の中で理解することを追求すべきと主張し、文献中心の伝統主義のオクスフォード教授Fergus Millar(1935/7-2019/7)と意見を異にした。ある意味、ケンブリッジ大学での最初の恩師A.H.M.Jonesの文献史学の集大成的著述The Later Roman Empire 284-602, Oxford, 1973出版のあと、おそらく、何が自分に残されているかと考えあぐねた末に、彼は、フィンレイの影響によってアメリカ流の社会科学的視点を古典学に導入しようと意図的に蛮勇を振るったのではなかろうか。性格的にも万人向けではなかったようだ。だから決して評判がよかったわけではないらしいが、20世紀において最も影響力のある古代史家の一人だったことに間違いはない。
完璧主義者だった彼に著書は4冊とそう多くないが(論稿はそれなりにある。彼の人となりや研究業績の位置づけ・評価に関して詳しくは、学統的に盟友とでもいうべきコロンビア大学教授W.V.Harrisの以下参照。”Morris Keith Hopkins 1934–2004, ” Proceedings of the British Academy,130, 2005, 81–105:私はこれに導かれて迂闊にも、私が学部時代に竹内正三先生の演習で延々と読んだ前記A.H.M.Jones, The Later Roman Empire 284-602の前書きで、Jonesが謝意を表している錚々たる顔ぶれの中にロンドン大学のMr.Hopkins(当時博士論文も書いていなかったはず)が第二巻を読んでくれたという一文を遅ればせながら確認することができた)、彼の著作の日本語訳は以下の2冊しかない。
・・・・これは私にとって盲点だった! しかし、いわれてみれば納得なのである。言い得て妙なのだが、へたをすると「GOD / GOTT」は「GOLD / GELD」なのだ(昨今の旧統一教会問題など、その錬金術の小規模な現実にすぎない)。慌てて註(66)をみてみると、冒頭に「この主張は大胆であるが、細部に関しては正当化しがたいものである」と、著者自身の私には意味不明のコメントが。そこに記されていた諸史料のうち、他の教会史家たちがコンスタンティヌス顕彰で書いている中で、「無名氏『戦争をめぐる問題について』2.1」ただ一人がそれにズバリ言及しているのだが、これは初見だったので有難かった(Anonymus, De rebus bellici : https://archive.md/xo0fT:あとになって、以下もあることを知った;Firmicus Maternus, The Error of the Pagan Religions, in:Ancient Christian Writers, No.37, 1970 : De errore profanarum religionum)。こういう本は我が図書館には当然のように所蔵されているのは、ありがたいことだ。