この本は、2023/3/13にサクラ舎出版の、河島思郎氏の著作である。遅ればせながらその存在を知ったのは昨日だったのだが、即注文したら翌日届いた。
さっそくパラパラ覗いてみたレベルだが、入手以前に、ごく普通の庶民を50名挙げて何かを述べるのって古代ローマではなかなか大変だろうなとか、最近になってようやく、V.レオン『図説古代仕事大全』原書房、2009(原著出版2007)や、K.-L.ヴェーバー『古代ローマ生活事典』みすず書房、2011(2006)や、R.クナップ『古代ローマの庶民たち:歴史からこぼれ落ちた人々の生活』白水社、2015(2011)などが翻訳出版されるようになってきたが、それらとどう差別化しているのだろうか(我が国の研究者では嚆矢ではないか)、と思っていたが、案の定、王政時代を扱った第1章は神話の登場人物や庶民とは言えない著名人の羅列で、やっぱりな感が漂ったものの、第2章からが本領発揮で、主として墓碑などの銘文に記載された人々(正真正銘の普通の人)、それに文書史料で登場する若干普通とはいえないかもの人々を骨格に、種々の周辺的考古学的遺物の写真で肉付けしての叙述が続く。最後を飾るのが犬なのはまあ、ご愛敬というべきか。それとも「はじめに」に登場する老女ユリア・アゲレを加えればお約束の50人に達する、というわけだろうか。
カラー画像、それに雑学のコラム8つ、それに本書を読むにあたってのごく簡単な豆知識20、それに帝都ローマや地中海世界の地図も付されていて、サービス精神満載だが、欲をいうともう少し銘文に寄り添った叙述を味わいたかった、という感想なのだが、これは一般向け書物には無理な注文なのかもしれない。
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