良い番組はないかと探していたら、BS TBSで、8/13に放映された2時間番組「幻の海底遺産を探せ!:水中ドローンで大捜索」(https://bs.tbs.co.jp/culture/underseaheritage/)が,見逃しでまだ見ることができることが分かったので、さっそく見てみた。この見逃しは一週間程度配信されるらしい。
あの話題をさらった元寇船の紹介はまったくなかった。このドキュメントの中心は、以前紹介したことがある我が国の水中考古学の開拓者のひとり佐々木ランディ博士(帝京大学准教授)のプロジェクトの紹介で、沖の島に至る宗像の海で漁師の情報や水中3D測量の成果を勘案してX1,X2, Yの三地点に小型の水中ドローンで調査をおこなった。調査期間はなんと2日間とまあ普通では成果の出ない短かさだったが、水深65mあたりなので、潜水しての作業はもとよりかなり困難。小型の水中ドローンで、日露戦争のとき水雷で沈没した常陸丸(これは明治期に日本が自力で建設した最初の船だったそうだ)、また明治初期から昭和初期の小型木造船を確認できたのは上出来と思われる。おそらく事前調査が十分になされていてのことだったのだろう。その意味でちょっとやらせ臭さを感じたが、まあいいだろう。
またエピソード的に、幕末のオランダ製の開陽丸の復元状況の紹介や、これも佐々木准教授が関わった、京都府の女子高校生がクラウドファンディングで必要資金300万円を集め、2022年に丹後の海中遺跡プロジェクトを実施した様子の紹介もあって、未だほとんど手つかずの日本近海の水中考古学への招きになっていた。この調子で北前船の航路沿いに、こっちは未開発のまま遺跡が遺存している可能性が高いだけに、調査すれば面白いだろうなと。
私的には、丹後プロジェクトで「はな(鼻)ぐり岩」という穴が開けられた岩盤が登場したのが興味深かった。おそらく「鼻ぐり」とは牛の鼻に輪っかをかけるため開けられた穴との類似なのだろう。それが私が最近興味を持っている船舶の係留装置だったからだ。あとから佐々木准教授の「丹後の海で遺跡を探すー高校生の挑戦」(https://www.isan-no-sekai.jp/report/9118)を読んで、より詳しく状況を知ることができた。感激のあまりここでは勝手に係留装置関連の図3を紹介しておく。これはなかなか貴重な成果だと私は思う。もっと早く読んでいたら、私の論文に専門的用語として利用できたのに、という思いが強い。
こういった遺物は石見銀山の港だった温泉津でも遺存しているそうで(以下の写真:https://www.pref.shimane.lg.jp/industry/suisan/gyokou/shiryo/06hanaguri.html)、まあどこでも考えることは同じという感想をもったが、日本の場合まだまだ未調査状態だそうだ。それを高校生がやったわけである。
【参考ウェブ】
https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/clip/20161219_01/
https://studyu.jp/feature/theme/underwater-archeology/ https://www.ginzan-wm.jp/purpose_post/%E9%BC%BB%E3%81%90%E3%82%8A%E5%B2%A9/
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