(2)渡伊12日目,実質あと一週間残すのみ

 今般、不要だろうと思っていつものメディア接続アダプターを持ってこなかったのだが、これが仇となってなぜかカメラで撮った画像をパソコンに取り込めない(新しいアダプタなのに、いやそのせいか)、認識してくれないので、とりあえず文字情報ばかりになりますが、悪しからず。帰国後に画像を付加します。

 今回は、これといって目玉見学や新機軸の調査がなくて、これまでの欠けパズル埋め的な内容ではあるが、そんななか明日のフィミチーノのクラウディウス=ネロのポルトゥス北岸壁探査が一大イベントで、明後日のパラティヌス丘での大規模公衆トイレ見学ができたら御の字というわけである。

 これまではそのための助走といった感じもあって、なりゆきで今日も休養日。これまで続稿論考がらみでテヴェレ川河川敷でのエンポリオン遺構の再確認、ポルティクス・アエミィリアPorticus Aemilia遺構の確認のため、ピラミデ駅近を主軸に動いていた。これは短い2本足でひたすら歩き回って、犬も歩けば式でそれなりに思いがけない成果もあったが、さて時代的に古代ローマ時代まで遡れるものかどうか、これが問題だ。

 半ば予想通りの空振りも多く、トッレ・アルジェンティーナ西側の大規模トイレは不発、テルメ博物館の「休息しているボクサー像」の股間撮影は想定外の地方巡業でご出張中、オスティア・アンティカ博物館所蔵なったはずのトルローニア・レリーフとのご対面は今回もダメ、といった具合である(工事はこの3月末日で終了のはずが・・・)。まあイタリアではよくあることなので、そうかと思うだけだが。

 昨日早朝に宿舎を出て小一時間並んで入場したヴァチカン博物館では、初期キリスト教石棺部門の模様替えで、以前展示してあって私の論文(「紀元後3世紀初頭のM.Aurelius Prosenesの石棺を見、銘文を読む」井内太郎編『歴史家のパレット』渓水社、平成17(2005)年、pp.25-44)にも書いた碑文のレプリカが消えていたのはちょっと衝撃的だった(レプリカなのでしょうがないとは思う:本物はボルゲーゼ公園のフラミニア門近くにin situで置かれているが、コロナ以前はその手前が地下鉄C線工事の物置になっていて近寄れなくなっていた。さて今はどうなっていることやら)。ヒッポリュトス座像の手前に規制線が張ってあって、その奧のカラカッラ浴場の剣闘士たちの床モザイクの俯瞰場所にいけなくなっていたのも、おやおやだ。代わりにこれまで長らく閉鎖されていたギリシア彫刻部門は公開されていたが、こっちにはもとより関心はない。あとは、久々に公開のキアラモンティのBraccio Nuovoでのフィリップス・アラプス像とのご対面で旧交を温めることができた。もちろんプリマ・ポルタのアウグストゥス像もご健在だが、そういえば、ここが閉鎖中にこれまで博物館入り口に飾ってあった極彩色のレプリカ像は消えてしまっていたなあ。以下の写真はケータイで撮ったお昼頃の灼熱の中庭。青い空と白壁が燦然と耀いていて微塵も妥協なし。

 あと今回の注目は、現在校正中の原稿の註(4)で触れた八角形中庭に展示されている「Portus風景のレリーフ」(なのか一般名詞的に「港風景」ととるべきか)。最初石棺にこだわって探していたが不発で、これって順路の入口右側の壁に正面だけ貼り付けられていたのをみつけた。若干上向き遠目だし細かい所でだいぶ欠けているので、手引きとなる修正図があると助かるが、とりあえずはみつけえていない。トルローニア・レリーフはあるのに、である。

 ところで、このところのまったくの生活実感の体験談であるが、今回同行者が老体の私を慮って地階(日本でいう一階)のコンドミニオを押さえてくれた。生活してみての実感だが、これまで上階ばかりだったので気付かなかったことだが、すばしっこい藪蚊に悩まされるのである。特に若いOK君にはつきまとっているようだ。こんなこともあって日本で言う2階、こっちでの一階で住むほうが蚊対策的にも煩わしくないのではと思うことしきりである(但し、蚊の自力行動空間は2階までなら十分可能、場合によってはそれ以上の上階にも人間につきまとってエレベータで上ってくる、という情報もあるが)。そういえば大昔泊まったポンペイのホテルの地階でもそんなことあって、たまたま日本から持参していた蚊取り線香で部屋中たぶん異臭に染まらせて、そのせいもあって逃げるように退散したこともあったっけ。ちなみにこちらでも蚊取り線香は売っているが、これまで買ったことはない。今回も出発前にコンビニで買った虫除けミストのスキン用バルサンで凌いでいる。

 あと、リド線に乗っていて気付いたのだが、新しい車両だと、AciliaとOstia Anticaの間に「●」が付いている駅表示があって、あらかじめ新駅設定が表示されている(駅名はまだない)。駅舎もすでに一部構築されていて(素早いことで、すでに落書きも書かれていた)、確かにこれまでAciliaとOstia Antica間はやたら長いなあと思っていたのだが。以下はケータイでとった写真で、左が旧来、右が新車両のもの。

 ところで、ピラミデから宿舎まで30分かかるのだが、どういうものか帰宅時に眠たくなってまどろんでしまう。これも老化現象か。あぶないと思いつつ、まあ地元民が多いせいか今のところ無事である。また腰痛をはじめ今回老いを感じること多し。

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