日経ナショナルジオグラフィックからの出版で、今年の6月出版とまだ日が浅いせいか古書でも安くないので、しょうがないなという感じで購入した。
当方のねらい目は、考古学上でのそれとかが書かれているのでは、というあたりだったのだが、トリノの聖骸布も簡単ではあるが掲載されている。時代的に興味をひかれたのは、死海文書に先行する「発掘物」があり、それは偽物とされて消えてしまったことで、そんなこと私は全然知らなかった。類似の事例は数多くあったはずだ。
それにしても、手に技をもっている者が贋作・模作にチャレンジしてしまうのは、人間の性(さが)とでもいうしかない。
ピルトダウン人のところで、学生時代に傾倒して読んだ『現象としての人間』 (Le Phénomène Humain)の著者、イエズス会士テイヤール・ド・シャルダンが出てきたのには55年振りの久々のことでいささか虚を突かれたが、北京原人といい、発掘には贋物がつきもののようで、しかし真偽の検討などこちらには判断基準がないので、なかなか手強いことだ。
Pierre Teilhard de Chardin, SJ(1881/5/1-1955/4/10)
横道に逸れるが、今回はじめて、当時、カトリック教会内で批判され続けていたテイヤール・ド・シャルダンを、なんと後の教皇ベネディクト16世になるあの厳格なヨーゼフ・ラッツィンガー枢機卿が擁護していたということを知って、いささか驚いた。今となっては時代遅れのテイヤール・ド・シャルダンの業績であるが、当時のカトリック教会主流に臆することなく研究的に一歩踏み出すことを恐れなかった彼の生き様は、いかにも時代を果敢に先取りするイエズス会士の真骨頂を示していて、あらぬ憶測からようやく最近名誉回復された教父学研究者ジャン・ダニエルーJean Daniélou SJ 枢機卿ともども、私は強い親近感を感じてきたのである。
Jean Daniélou SJ 枢機卿(1905/5/14-1974/5/20)
以下参照:2024/1/3「ジャン・ダニエルー枢機卿の名誉回復」
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