2023/9/16-12/10に東京上野の東京都美術館で開催中の「永遠の都ローマ展」を見学した。予想通りといってはなんだが、見学者はそう多くなく、会場が広々としていたこともあって、ゆったりと見学できたのだが、3階を貫いての構造上、見直しのための逆行ができづらい恨みは残った。
中でも私の興味をそそったのは、「コンスタンティヌス帝の巨像の左手」のコピー(エウルのローマ文明博物館所蔵)が展示されていたが、そこでは既に2018年再発見の人指し指も復元されていたので(本ブログの2021/5/9参照)、おやおやイタリアにしては用意周到なことと、まずは感心した。今回の展示会では写真が撮れなかったのだが(なぜかトラヤヌス記念柱のコピー二点だけ例外)、ぐぐってそれらしいのを見つけたので転載する。
写真左が今回入手の修復画像;写真右は2005年に一時的に天球globusと左手が合体されたときのもので、当然ながら人指し指は先端から第二関節までが欠損していることに注目。
それにコンスタンティヌス帝の巨像頭部も完璧に修復コピーされていた。残存現品は裏側が壊れているので中を覗けて、歴代の稚拙な修復跡も確認できてしまうのであるが。
あと、カラヴァッジオ派の絵が一枚来ていたが、なぜかカタログにはカピトリーノ博物(美術)館所蔵の二枚の内の伝「洗礼者聖ヨハネ」も掲載されていて?だったが、これは福岡市美術館では展示される由で納得(但し、私見ではカピトリーノ所蔵のカラヴァッジオ作の二点はいずれも光のあて方や緊迫感に欠けていて凡作に思えてしまう:但し、彼のリアリズム追求という観点からすると面白味あるというべきか)。「カピトリーノのヴェヌス像」の展示が東京会場のみなのでその替わりというわけであろう。ところで私的にはこのヴェヌス像よりも「ディオニュソスの頭部」のほうが印象的だった。
左図(男のモデルは「勝ち誇るキューピッド」などにしばしば登場:あるいは若き日の自画像か)を、右図のローマのバルベリーニ美術館所蔵「ホロフェルネスの首を斬るユーディット」と比較せよ(若い女性のモデルは著名な娼婦だったのでここでも一騒動):参照、https://www.youtube.com/watch?v=3YlQJp5DNvA
ちょっと横にずれるが、絵画部門でヴェベレ川風景を描いた小品「トル・ディ・ノーナの眺望」も、17世紀末の河畔を描いていて思わず凝視してしまったのは、船着き場と称して、水の干上がった浅瀬に船が乗り上げている図があったからで(よって写実的だったという前提に立つならば、乾期に描かれた風景ということになる)、これがまあ古代以来の変わらぬ船着き場の常態を示していると考えたからである。すなわち、港と言ってもいつも護岸や桟橋があって船がきちんと係留されていたわけではないのだ。前近代を扱う場合、こういった当時の常識に立った認識を持たないといけないと思う。
ところで今回の展示会の宣伝下手というべきか、事前のチラシなどでは明治遣欧使節団とローマ市の関係を記念してという口上が述べられていたが、それはそうなのだろうが、展示会ではそれ以前の天正遣欧少年使節団や支倉常長らの慶長遣欧使節団にも触れられていて、こちらにももっと力を入れて宣伝していたらよかったのでは、と思ったことだ。
最後にミュージアムグッズ売り場があって、例のごとく無関係のイタリア食品などの私的には無意味な販売がほとんどだった。一番期待していたのはピラネージ作「トラヤヌス記念柱」の詳細図を折りたたみにでもして販売してくれていると嬉しいなと思っていたのだが、予想通りそんなものはなかった。
http://kaiga-date.com/colonna_traiana-giovanni_battista_piranesi (裏表両面があればもっとよかっただろう)
それといつも思うのだが、会場の一画で放映していたNHKプラスでの映像DVDも、なぜ販売してくれないのだろうか。まあ著作権の問題があるのかもだが、もしあれば教材としておおいに意味あるはずだが。今だと有難いことに以下でそれの短縮版を無料で見ることができる。https://www2.nhk.or.jp/learning/video/?das_id=D0024010684_00000
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