月: 2024年5月

ローマ皇帝フィリップス・アラプス像のシリア紙幣

 古代ローマ皇帝フィリップス・アラプス掲載紙幣をちょっと探す気になって。彼は知る人ぞ知る「最初のキリスト教皇帝」で、私の学位論文の中心テーマだった。

 1987年から翌年にかけて発行された100シリア・ポンド紙幣。表面にボスラのローマ式劇場とローマ皇帝フィリップス・アラプス、裏面にはヒジャーズ鉄道とヒジャーズ駅が描かれている。さっそく実物を入手しようとしたが(この収集癖、つくづく懲りない性格というか・・・)、現在品切れのようだ。ここではウェッブで表裏の写真を拾ってきたのでメモ的に掲載しておく。

【追記】本日2024/6/12調べたらYahoo!オークションで、郵送費込みで¥864で一枚新札を確保できた。なんとまあ簡単に入手できるいい時代である。

 彼は古代ローマ時代以来「アラブ人フィリップス」と表記されるが、後期ローマ帝国の属州「アラビア」は、シリアからイスラエルの背後の東部で、州都をBostraとしていたので(現シリアのボスラ:だから紙幣の彼の左側にボスラのローマ式劇場遺跡[建設年代は2世紀初頭であるが、オーケストラは半円形でないので、ギリシア的影響を受けているようだ]も描かれている)、シリア(・アラブ共和国)の紙幣になってもなんら不思議ではないわけなのである。

 ちなみに関連で、フィリップス・アラプスと同年に発行された500シリア・ポンド大型紙幣には、パルミラの女王ゼノビア(267年頃から274年頃まで権力掌握)の肖像が描かれている(その左にはパルミラ遺跡:裏面は、タブカ・ダムとトラクターによる灌漑)。彼女はオアシス都市パルミラを拠点として3世紀第三四半期に隆盛を誇ったのだが、ググってみるとこの紙幣、郵送料込みでも¥6600もするので、年金生活者としてはとりあえずパス。彼女の方がフィリップスよりも高額紙幣なのは、まあなんとなく納得。

パルミラ分離王国最大版図

【その後紙幣は2009年に新画像で発行されているので、上記の紙幣が現在も通用するかどうかは不明。というのは国によって新札発行後一定期間過ぎると旧札は通用しなくなる場合もある。私はイタリアでこの手段で使用できない旧札をお釣りでつかまされたことがナポリであった。ま、得がたい資料として保存しているが:ところでこういった教材諸資料、どなたかに譲る時期に来ているような気がする】

【追伸:同じYahoo!オークションで、500ポンドと同じ人物から郵送料込みで¥1014で購入できそう。この価格落差はなんでしょうね】

Filed under: ブログ

国会図書館からのコピー入手体験

 いつものように元の所属大学でコピーをと思っていたのだが、なんと所蔵していなかったので、たまたま所蔵先にヒットした国立国会図書館に試しに自分でコピー送付を依頼してみる気になった。

 初回なので、事前の段取りが必要。まず本登録しなければならないが、それまでは簡易登録利用者というわけで、しかしそれでも「遠隔複写、記事掲載箇所調査、取寄せ閲覧(申込みのみ)、関西館所蔵資料の閲覧予約(申込みのみ)を利用」できる。そこで私は、本登録申請すると同時に『関西大学西洋史論叢』19、2016掲載の某氏「新刊紹介」のコピーを依頼した。それが5/11だった。折り返し利用者IDと複写受付完了連絡が送られて来た。ここまでは国会図書館の対応は素早かった。

 本登録完了通知は、一週間後の5/16で、複写が郵送されてきたのは本日5/28のことだった・・・。12日かかっている。しかも、コピー単価 B4で¥25で3枚、発送事務手数料¥250、送料¥128、消費税¥45で、計¥498。ちょっと割高かも。振込用紙が同封されていて、銀行振込の場合はみずほ銀行が指定されていた。

 これが紙のコピー送付ではなくメールでのpdf送付だったら日数は大幅に短縮できるだろうがなあ、とちょっと慨嘆。

 

Filed under: ブログ

マスク着用のお国柄

 以下、いささか古いが、ウィーン発 『コンフィデンシャル』(2023/3/18)より。

 オーストリアでは、 「公共の場で顔を覆うことの禁止に関する連邦法」 (Anti-Face-Covering Act – AGesVG)がある。この連邦法には「公共の場所や公共の建物で顔の特徴を衣服やその他の物で隠したり隠したりして、顔の特徴を認識できないようにする人は誰でも、行政違反を犯し、最高150ユーロ(約2万1000円)の罰金を科せられます」と明記されている、らしい。例外は、「芸術的、文化的、または伝統的なイベント、またはスポーツで顔を隠す場合、違反することはない。もちろん、健康上または職業上の理由から顔を隠す場合は例外」という。同法は2017年10月1日に発効している。マスク着用義務に関連する行政法が失効したと喜んでいたら、顔を隠してはならない覆面禁止法が復活して有効になったわけだ。

 たとえインフルエンザ予防のためにマスクをしていても、医者の診断書がなければ罰金を科せられるおそれがあるわけだ。書き手は「日本人旅行者はくれぐれも安易にマスクを着用しないようにご注意を」と文章を結んでいるが、円安だからとりあえず被害者は少ないかもであるが、お国柄によって色々あるなあと慨嘆する次第。

Filed under: ブログ

人口減がこういう形で

2024/5/10着信の中国新聞デジタル記事に以下が:

 広島県教委は10日、1学年1学級の小規模な県立高14校の今春の入学者数と生徒数を公表した。いずれも入学者は20人以上だったものの、生徒数は4校で60人を下回った。県教委は本年度から再編や統廃合の基準を「新入生20人未満か全校生徒60人未満」が2年続いた場合と定めている。

 掲載図をみてえっという思いがした。

 今を去る3、40年前私が勤務していた女子大・女子短大で学生募集して馴染みの高校名がそこに上がっていたからだ。いつの間にこんなことになってしまったのか。

 深刻である。

【追記】上記を書いて2週間後に、前に勤務していた大学・短大から二年ぶりに同窓会ニュースが届いた。その中になんと来年度から短大の募集を停止する、大学を公立に移行する運動を展開するとあった。私がいたころは短大のほうが稼ぎ頭で、その上に女子大が乗っかっていたのだが、いずれも広島県北の高校からかなり来ていた。私が転職してだいぶ経ってから、男女共学になり、それでも短大の方は大幅な定員割れが続いていたらしい。18歳人口の減少が中国地方の山間部ではもろに影響しているわけで、さもありなんという感じである。

 岡山県北の◎◎市にはかつてS音楽大学・同短期大学部もあったが、さっさと見切って30年程前に瀬戸内海沿岸に移転したのだが、現在の定員充足率は大学で70%、短大で80%とやはり苦戦しているようだが、広島市にあるエリザベト音大は充足率が徐々に低下して、現在84%弱となっている状況を考慮すると、むしろ健闘しているといえるのかもしれない。

 昨年なにかと広島サミットがらみで卒業生が話題になった広島女学院大学の充足率を今回調べてちょっとビックリした。収容定員1320名のところ在学者数950名、充足率はなんと72%。広島の女子大で唯一生き残るだろうという噂を以前聞いたことがある安田女子大であるが、どういう理由でそう予想されているのか私には不明であったが、その充足率は、95%あってなるほどと納得。

Filed under: ブログ

奥山俊宏『秘密解除:ロッキード事件』を読む

 昔、マッカーサーが更迭されて帰国したとき、日本国民は彼との別れを惜しみ、日本政府は彼に「終身国賓待遇の贈呈」や「マッカーサー記念館」建設計画も浮上したのだが、彼のアメリカ議会証言での「現代文明を基準とするならば、我ら(アングロサクソン)が45歳の年齢に達しているのと比較して日本人は12歳の少年のようなものです」との発言が日本にも伝えられると、急激に彼の人気は落ち込み、60万円の宣伝費をかけて集まった募金はわずか84,000円と惨憺たるありさまだった。1年後には募金どころか借金が300万円まで膨らみ、計画はすべて立ち消えとなった(ウィキペディアによる)。

 奥山俊宏『秘密解除』岩波書店、2016年、を読んでそれを思い出してしまった。副題に「田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか」とついているが、私的にはそれよりも重要と思われたのは以下だ。日本のマスコミや研究者には日本的な思考回路が固着していて、自ずと日本人が理解した受け取り方をしているわけだが、それは決して外国人、とりわけ今の場合だとアメリカ人の認識と一致しているわけではない。そのことを本書でいやというほど痛感させられたのである。

 本書の最大の見どころと功績は、解禁された米国公文書を丹念に繙いて、たとえば大統領との会話の中でのキッシンジャーの生の声を我々に伝えてくれたことである。その分わかり易い日本語になっていないわけだが(当然、日常語として反語や皮肉、諧謔的なジョークがふんだんに含まれる)、そこから透けて見えてくるものがある。それでなくとも外交の表舞台では美辞麗句が羅列されるのだが、彼らの本音はそこで明かされているわけではない。なのに日本側は言葉の表面だけ捉えているので、こりゃあかんわという感じになる。日本の首相に関する彼らの評価がいかに辛辣であったか、それを日本政府はもとよりマスメディアは正しく国民に伝えることができなかった、それを今回の読書で私は痛感することとなった。未だ十二歳なのだ。

 今も状況は依然としていささかも変わっていないはずだ。岸田さん、外遊でにやけてる場合ではないですよ。いやもう裸の王様状態かな。

 本書は今度、岩波現代文庫で再刊されるらしい。一読をお勧めする。

Filed under: ブログ

今日のクリスチャン・トゥデイ

世界のカトリック信者、1パーセント増加 司祭・修道者・神学生の数はいずれも減少:https://www.christiantoday.co.jp/articles/33577/20240501/catholic-church-2022-world-statistics.htm

ピアニストでカトリック信者のフジコ・ヘミングさん死去、92歳:https://www.christiantoday.co.jp/articles/33581/20240502/catholic-pianist-fuzjko-hemming-dies-at-92.htm

日本基督教団、聖路加チャプレン性加害事件の被害女性に回答書:https://www.christiantoday.co.jp/articles/33583/20240502/uccj-st-luke-chaplain-sexual-abuse.htm

皆川達夫さんが語る隠れキリシタンの祈り「オラショ」 400年の時を超えて伝わる異国のグレゴリオ聖歌:https://www.christiantoday.co.jp/articles/24792/20171117/catholic-hidden-christian-st-paul-tatsuo-minagawa-oratio.htm

上智学院元理事長、聖イグナチオ教会主任司祭髙祖敏明神父が旭日重光章を受章:https://www.christiantoday.co.jp/articles/33628/20240516/fr-toshiaki-koso-receives-kyokujitsu-jukosho-medal.htm

Filed under: ブログ

お役所もたいへんだ:緊急情報容器

 読書会やっていただいている千葉県の我孫子市で、高齢者が倒れて救急車が自宅に来たとき、係員が冷蔵庫を開けると病歴なんか書いてある容器があって、という話を聞いたので、同様なこと練馬区でもやっているのではと思ってググって見ると、あった。

 それで区役所にどこに取りに行けばいいのか問い合わせたら・・・、総合受付で待たされて・・・もっともらしい担当にまわされて、お時間下さい、電話しますといわれ・・・電話がかかってきたのだが、もうやってませんと。

 でググった時の情報見直したら、なんと2011年6月の日経新聞情報だった(「冷蔵庫に病歴など救急情報を:練馬区が容器配布」:https://www.nikkei.com/article/DGXNZO29566650R30C11A5L72000/)。そのとき3万本用意していたらしいが、まあ13年後に残っていたり、担当だってもういるわけもなく・・・、我ながら周回遅れのとんだ間抜けな問合せだったわけだ。

 それで嫁さんと話したのだが、お役人か議員さんの会議で提案あって、「そりゃいいアイデアだ」とばかり予算付けて、わが区ではこんないい試みをやってますとアピールして、・・・13年後なんかに職員すら覚えていないなんてこと、実際には山ほどあるんじゃないか、と。救急隊員だって冷蔵庫見てるよりも、目の前の患者の受け入れ病院を探すほうに気をとられてるはずだし。

 人気取りもあって、その場しのぎの施策でつないでいくけど永続するわけないわけで。

 そういえば、昨年末になって65歳以上のみの高齢者の家に区役所から訪問者が訪問してきて(そういう制度ができたらしい)、だけど留守だったのでアンケート用紙を置いてかれて、その集計結果が先般送られて来たことあったけど、これなんかもその類いなんだろうなと(だって、アンケートの内容がありきたりで表面的で、内容なかったし)。

 やってます感と実効は別なんだよな。上司に命じられてやらされているほうも大変だ。

【追記】2024/7/2 また区の投函があった。「練馬区 訪問支援事業で地域を回ってます!」。これは区の委託で「練馬地域包括支援センター」がやっていることらしい。

Filed under: ブログ

枢機卿の世代交代

 以下の情報による:https://wien2006.livedoor.blog/archives/52387961.html

 世界に約14億人の信者を抱えるローマ・カトリック教会(昔はもっと多かったが段々少なくなっている)には現在、237人の枢機卿がいる。前教皇庁教理省長官のルイス・フランシスコ・ラダリア・フェレール枢機卿が今年4月19日に80歳になった後、教皇選挙に参加できる権利を持つ枢機卿(80歳以下)の数は127人に減少した。そのうち、現教皇フランシスコによって枢機卿となった数は92人、ベネディクト16世時代に任命された枢機卿は27人、そしてヨハネ・パウロ2世時代に選ばれた枢機卿は8人だ。

 枢機卿の国別を見ると、イタリア人枢機卿が昔はコンクラーベを独占してきたが、現在は14人で全体の約10%だ。それに次いで米国が11人、スペイン7人、ブラジルとフランスが各6人、インド5人、ポーランドとポルトガルが各4人、ドイツとアルゼンチンが各3人、イギリス、スイス、メキシコ、タンザニア、フィリピンが各2人となっている。ちなみに、大陸別にみると、ヨーロッパ人が51人、南米20人、北米15人、アジア21人、アフリカ17人、オセアニア3人だ。聖職者の未成年者への性的虐待の多発で信者離れが進む欧州教会が依然、枢機卿の最大グループを形成している。

 名称から地域限定的な「ローマ」が消え、真の意味での「カトリック」になるためには、一方で信者数が減少する中で、枢機卿の出身大陸もアジアやアフリカが倍加する必要あるだろうが、はたしてそういう方向にむかうのであろうか。

Filed under: ブログ