古気候学の成果と有効性

 朝日新聞デジタル版(有料記事) 2024年7月16日 「「10年に一度」の気象が頻出する理由:奇跡の湖が伝える暴れる気候」を読んだ:https://digital.asahi.com/articles/ASS7C4JWZS7CUPQJ003M.html

 福井県の水月湖の湖底には、自然の偶然が重なって7万年以上の年縞(ねんこう)がきれいに沈殿している。この年縞はほぼ1年単位で時代確定でき、2012年に世界標準の物差しに認定された。その解析で古気候学を研究しているのが、中川毅・立命館大学教授。

年縞の展示状況

 過去100万年の地球では、不安定な寒冷期のほうが普通の状態だったが、10万年に一度温暖で安定した時代が到来し、それは平均して数千年程度続くのだが、今回は1万1千年以上続いている(この安定期に、暴れる気候では不可能だった農耕が発生しえたのではと、教授は想定)。

 寒冷期になるとこれまでの人類の農耕文化は崩壊しかねないわけで(つまり人類は温暖な時代にしか文明を築けていない)、安定期はすでに終わっていてもおかしくないのだが、それは人間による温暖化の影響かもしれないのだが、教授は言う:「過去、氷期などの時代に気候が不安定化して暴れていたのは、二つ以上の矛盾する力が働いたことが原因だった。いまの状況といえば、地球と太陽の位置関係から考えると、すでに氷期になっていても不思議ではない。一方で、地球の気温は高い状態が続いている。そこに二酸化炭素などによる温室効果が加わり、三つの力が混在しているのが現在である。最も恐ろしいのは、人類の文明を育んだ『気候の安定した時代』が終わるというシナリオではないか」。

 気象もこれまでの常識では計れない変化をする可能性があるというわけである。予測不能の未来に対処するには、「もしかしたら、現在は役に立たなそうな人や組織が、逆に大活躍するかもしれない。個人のレベルでは柔軟な知恵とオリジナリティー、社会のレベルでは多様性と包容力が重要になるのでは」というのが、教授の処方箋である。いかにも京大系好みの未来学的思考だ。

 私的にはかねてヤマ勘的に、古気候学的視点で射程を広くとって地球や宇宙の創成の視点を持つべきだと考えて来たが(本ブログの2024/4/30を参照のこと)、その傍証的有力データとなり得るように思う。

【補論】「未知の細道 No.150:水月湖の地形と年縞博物館」2019/11/25

 https://www.driveplaza.com/trip/michinohosomichi/ver150/

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