Pompeii「メナンドロスの邸宅」のテルメ・モザイクの解釈

  さきほど、Quora Digestを見るともなく見ていて、表記の記事に気づいた。以下のモザイクはこの家のテルメの calidarium入り口床に埋め込まれた衆知のものである。私はこれを今まで単純に黒人奴隷が尿瓶を運んでいる図柄と捉えていたが、今回の説明によるとまったく違っているという(https://wondersofthepast.quora.com/THE-ROMANS-AND-THE-ETHIOPIANS-their-faces-burned-Pompeii-House-of-Menander-Mosaic-at-the-entrance-to-the-calidar)。

 第一に、この奴隷は、エチオピア人で、その民族名はギリシア語で語源学的に、「日焼けした顔」:(aithō =’I burn’ と ópsis =’I look’)から来ているそうだ。

 第二に、彼の足下の図柄は(これはこれまで私には不明だった)、垢こすりのstrigilisで囲まれたオイル容器が描かれていて、よって上下の図柄を統合的に捉えるなら、彼が両手に持っている容器は、尿瓶ではなく、垢取り用のオイル入れ (askos, pl.askoi:原意は「ワインの革袋」)、ということになる。もっともオイル入れはもっと小型で洒落たものが多かったが。それは携帯用と業務用の違いなのであろうか。

 第三に、このエチオピア人の巨根の先が剥けていることから、彼は割礼を受けているとされる。割礼は元来がエジプト人の風習で、ギリシア・ローマでは一種の嘲笑の対象であったような。

 いや、ともかくなかなか明快な解釈で、おかげで積年の疑問が解消されて爽快である。

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