この初回放映はたぶん2012年。今回初めて見たがなかなかの出来だった。
私は大昔に、ヘルムート・トリブッチの『蜃気楼文明:ピラミッド、ナスカ、ストーンヘンジ』工作舎、1989年(原著:Helmut Tributsh, Das Rätsel der Götte, Ullstein Verlag, 1983)、を大きな驚きで読んだ記憶がある。あまりの衝撃に大学教養課程の西洋古代史の授業の推薦本にしたほどだ。ひとつひとつの事例の正否は横に置いておいて、彼の桁外れの着想力に心底びっくりしたのである。細かい内容はもう忘れてしまったが、その中にブリテン島に先行的に巨石文明が存在していたというちゃぶ台返しがあったことだけは強く印象付けられて、今でも覚えている(2019年3月23日にトリブッチがらみで関連ブログ)。
今回テレビを見て、その中にイースター島の話もあったことを思い出してしまった。しかし妄想が勝ったトリブッチ本とは異なり、今回は実験考古学的、科学的な根拠でのモアイ像解明で、トリブッチ以降30年、アヒルの足かきよろしくじっくりと検証していた研究者たちがいたのだと、その努力と成果にまずは称賛したい思いにかられてしまう、そんな内容の放映だった。
イースター島への渡来人については今やDNAで解明されるという話は、現在では射程内でそう驚かなかったが、火山岩から切り取ってモアイ像をどう運んだのかという話(着想と実践の勝利、驚天動地の事実というべきか)や、モアイ像が建てられた場所が島の貴重な水資源(地下水)が得られる場所だったことがデータ的に立証されたという話や、島の崩壊を以前のヨーロッパ人研究者たちは島人たちの内輪もめに求めて来たが、人口激減はヨーロッパ人の渡来以後のことで、天然痘が決定的だったとしているなど、たいへん説得的な内容だった。
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今年になって放映された「AIで謎に迫る!ナスカの地上絵」を見て同様の感想を持ったが、研究とはどういうものか、視点を変えると従来説がいとも簡単にひっくり返され(そこに至るまではそんなに簡単ではないが)、また先入見や既成概念にとらわれているとあらぬ方向に暴走し、研究という大義名分で偏見を振りまきかねないということを知るにはいい番組だった。
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