2025/4/28のNHKBSで、1982年のNHK特集で放映されたもの。副題は「秘密諜報員ベラスコ」
ぎりぎり当事者が生き残っていて、肉声を残し得た貴重なドキュメンタリー。
冒頭で、戦争中の日本側電信文をアメリカはほぼ凡て解読していた。それが「マジック」と呼ばれる書類で保存され、その中に、第2次世界大戦前夜から在マドリッド日本公使館(公使須磨彌吉郎、一書記官三浦文夫[通訳])が組織したスパイ組織「東」の記録もあった。公使の発案で中立国スペインで計画がなされたが、その組織の中心がアルカサール・デ・ベラスコで、総勢20名ほどの要員がアメリカに貼り付けられた。主力はカリフォルニアの6名。

それによって貴重な情報がもたらされたが、問題は、日本側がそれを利用する発想がまったくといっていいほどなかったことだ。それが日本がガダルカナル戦線や原爆製造情報への有効対応をとれなかった結果となった。
戦線に出る米国兵士から神父になりすまして情報を得ることもあったようで、これはなかなか面白かった。カトリック教徒の告解での情報である。
日本側の参謀本部・軍令部関係者の生き残りの言も出てきていて、その情報を把握していなかった現実が明言されている。日本に有利な情報のみが採用される傾向があったのだ。米軍側では、日本にも情報分析組織があると思っていたが、あとからどうもそれがないと判明した由。海軍・陸軍・外務省での情報一元化がなされていないどころではなく、その逆ばかりやっていた由。
情報戦で日本はすでに敗北していたこの件は、日本人の弱点としてこれまで口が酸っぱくなるほど言われてきたことである。「虫のいい楽観論」。現在においても、その教訓が活かされているといえない現実を我々は日々体感している。
当時、三浦書記官44歳、ベラスコ33歳、そして40年が経った。「まだ生きているよ。…あれから40年がたった、そう40年だ」。それが放映されて、もう50年が経とうとしている。
もちろんアーカイブまたはオンデマンドで見ることができる。見るべきだろう。
【付録】この件で以下が無料でみることができることを知った。ただし今年7月末まで。
「NHKスペシャル ドキュメント太平洋戦争 第4集」1993年放送
コメント 0 件