投稿者: k.toyota

アメリカ民主主義とはなにか

 日本がお手本にしてきたアメリカに関して、あれれと思うことが最近目立ってきた。

 ◎建国の偉人たちは奴隷制を容認していた。https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/1f77f8c4829a5469a475645c9788af4ca085e86e

 ◎【「男性優位社会」アメリカ】:論より証拠、女性大統領がいまだ誕生しない国
https://miu.ismedia.jp/r/c.do?2nAB_kmC_4fB_sds

 ◎議会襲撃事件参加者へ恩赦を就任初日に与えるトランプ、次男に恩赦を与えたバイデンも同罪か?    https://wedge.ismedia.jp/articles/-/35980

 以前にも紹介したかもの地図を掲載しておこう。典拠は以下:「世界人口の71%が「独裁に分類される国に住む」という衝撃」https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f449889e876d8789b92f05ec4388f92cdd2d608c

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「グラディエーターII」を見てきた

 11月15日から公開上映が始まっているのは知っていたが、あれこれ多忙な日々が過ぎ、数日前ようやく思い立ち近所のユナイテッド・シネマでみる気になってググってみたらなんと翌日の12/12が最終上映になっているではないか! あわてて予約して行ってきたのだが、なんと上映は21時25分から0時25分までの一日一回のみ。要するに、約1か月間の、おそらく深夜に一回のみの上映だったわけだ。ちなみに12/11の上映を見た観客は私以外は2名しかいなかった。https://gladiator2.jp/

 そのうえ受付でパンフないのかと聴いたらあっさり「ありません」といわれてしまった。パートIの時とは大違いだ。

 そのパートIの上演は2000年だったから、パートIIができるまで、実に24年が経過していた。連続して登場した数少ない俳優のうちの一人に、ルキッラ役のコニー・ニールセンがいたが、実年齢で35歳から60歳寸前になっていたわけなのである。さすがに往年のオーラは失せてしまっていたが。

 さて今回の内容だが、ローマ軍に敗れて捕虜になったヌミディア兵の中にいたのが、実はルキッラの息子ルキウスで、叔父の皇帝コンモドゥスの死後、命の危険を案じた母に言い含められて姿を消して(ここらあたりの設定はフィクションとはいえ極めて苦しい)、流浪の末にヌミディア反乱軍兵士になっていたらしい。彼が今回の主役となるわけだ。

 冒頭の回顧場面で、前回主役のラッセル・クローのマクシムスがコロッセオでの死亡直前にルキッラと謎の問答をしていた箇所が出てくる。「ルキウスは?」「無事です」。

 私は前作を何度も見たあと周辺情報を求めてかなりググっていたのだが、その中で「後日談」ならぬ「前日談」を英語から翻訳しているウェブを見つけて、熟読したことがある(ウィキペディア情報によると「映画本編の序章部分」の映画化の構想もあった由なので、そのシナリオだったのかもしれない)。今でも私の古いパソコンのハードディスクか、保存用メディアの中にそれは眠っているはずだが、そこではマクシムスが皇帝の娘ルキッラと通じていた過去があり、そこで得られた子供がルキッラが嫁いだルキウス・ウェルスの遺児として育てられていたルキウスだった、というかなり込み入った伏線が張られていた。それを知って映画を見直すと思わせぶりなパートIの諸場面の謎もすべて解けてくる。それが今回冒頭の回顧場面での問答の真意、種明かしされているわけだ。

 史実では、ルキッラは皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌスの次女として149年に産まれ、14歳でルキウス・ウェルスと結婚し,3年後に一女をもうけたが、ルキウス・ウェルスの死後二度目の結婚を20歳の頃Pompeianusとし、翌年あたりに一人の息子を得ていた。だが弟のコンモンドゥス皇帝によって、彼女は181ないし182年にカプリ島に追放されそこで暗殺されている。享年32, 3歳の生涯だった。

 パートIIの該時代の皇帝はカラカッラとゲタで、映画ではたしか双子となっているが、史実では1,2歳違いの兄弟で、211年はじめの父帝セプティミウス・セウェルスの死後、年末にゲタは23歳で兄によって暗殺死させられている。かねて兄弟の仲は悪かった。なのに映画では二人とも共同統治者として登場、しかも不気味な白塗りの顔で露骨に同性愛者風に描かれていて、違和感満載である。

 そこに狂言回しに、北アフリカ人で奴隷商人ないし剣闘士育成業者マクリヌス役でデンゼル・ワシントンが暗躍する(私は、同名皇帝を想起させるこの命名にはいささかひっかかってしまう:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/24/112200634/?n_cid=nbpnng_mled_html&xadid=10005)。前作と同様一貫して不甲斐ない立ち回りを演じさせられているのが元老院議員たちで、またもや安直な反乱計画が露見して、ルキッラも逮捕される。それを救うのが剣闘士たちの反乱と、オスティアから駆けつけるローマ軍団だ。彼らの合い言葉は「力と名誉を」Power and Honor で、だがしかし彼らが目指すのは暴力的な軍事力を背景にした古き良き共和政の復活、なのである。

 これを見ていて、私には監督リドリー・スコットの意図が透けてみえたように思えた。これではまるでトランプの主張ではないか。たとえ監督にその意図がなかったにしても、視聴者をそちらへの共感に誘導していないと言えないだろうか。それはアメリカの現実ではあるが、それでいいのか。いや未来展望が開けるのだろうか。私にはそう思えてならない。

 

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ローマ軍唯一残存の軍旗について

 ここでの「軍旗」は、軍団旗の鷲旗(aquila, pl.aquilae)ではなく、ここでは仮に「連隊旗」と名付けたvexillum(pl. vexilla)のほうである。軍団の象徴として各軍団に1つしかなかった鷲旗はこれまで現存が確認されていないが、絵画や記念碑などから形状や役割は明白である。

 その点むしろ軍団内に多数あったと想定される連隊旗の種類や形状は不明なことが多い。そのうえ時代の経過による変化もあったはずである。私は拙稿の中でvexillumに「皇帝旗」をも含めた叙述を書いたことがあるが、もちろん仮説である。

   軍団旗「鷲旗」         連隊旗:但し構成的イメージ

 現存唯一の連隊旗なるものは、1911年ごろにエジプトで発見された3世紀のもので、現在モスクワのプーシキン美術館所蔵である。ただ来歴および使用部隊名も不明である。残存しているのは勝利の女神ウィクトリアが描かれた厚いリネン製の布で、形は47×50センチメートルで、下端にはフリンジ(房飾り)をかけたような跡がある。現存しない木製の筒棒に取り付けられていたことも知られている。

   出土連隊旗          復元品        連隊旗の全体像       

 以上の情報は、2024/4/15にスペイン語版ウィキペディアで公開された。

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語学学校のブログ拝見

 偶然見つけたもの。イタリア語教室の「アカデミア・イタリアーナ」のポスト:https://accademia-italiana.jp/

 庶民的な情報が得られそう。例えば、以下の記事は今年7/1のもの。

 「品性を重んじる」:サン・ピエトロ内で働く人の条件:ピアスもタトゥーもしていないこと、独身…etc. これは大聖年に向けてサン・ピエトロで働く一般信者用の規則の一部と、il Messaggero紙が報じた。 タトゥーがキリスト教の社会でどう位置付けられているか何となくうかがい知ることができる気が…

 ついで、ポンペイがらみで9/9に以下が:

遺跡を保存するには様々な要因に対処しなければいけない。湿気はどこでも大きな問題だが、動物や鳥といった生物の糞なども問題になる。 そこでポンペイでは鳥をポンペイから遠ざけるために2年前から猛禽類が最低週3回パトロールするようになった。

https://www.youtube.com/watch?v=X6NDMtM47L4

 このポストとは別に「コラム」情報もあるので時々覗きたいものだ。

【補遺】これも最近みつけたイタリア本:

 ディエゴ・マルティーナ『誤読のイタリア』光文社新書、2021年、¥880.

 イタリア人と言ってもステレオタイプでない、色々の人がいますよ、という感じの内容か。著者の書き味がインテリ風なので、ざっくりと読めないかも。

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歴史ブログ発見! History Skills

 遅ればせながら、ググっていてみつけた。「History Skills」https://www.historyskills.com/。古代ローマ部門をちょっと覗いて見た段階だが、時代限定が王政から初期元首政までみたいで、後期ローマ帝国の項目は明示されていない。しかし、ローマ社会に触れたエピソードにはそれなりに読める感じ。

 問題は、出典が明記されていないことで、だからまあエピソード的にざっと読み飛ばすレベルでいいのだろう。読者がそこからなにがしかの知識を得ればいいわけで、それ以上を期待しなければいいわけだ。

 私が多少手がけてきたコンスタンティヌスの「アーチ門」がらみの記述(https://www.historyskills.com/classroom/ancient-history/arch-of-constantine/)を読んでみたが、取り立てていうべき新情報はなかった。

 また別の、若干高度なウェブも見つけた。「DOMVS ROMANA:Blog de la domus y la vida familiar en la antigua Roma」(https://domus-romana.blogspot.com/)である。スペイン語なので機械翻訳に依存することになるが、それでさえ色々と学べそうなのでうれしい。2013年以降テーマ的に現在149が掲載されているらしい。ただし先端的とは思えないが。

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イケてない広島?

 私は広島出身なので、デジタル版で中国新聞を取っている、といっても月10本程度の限定であるが。それで最近ニュースレターで知ったのだが「転入も減っている広島県 転出が増えただけじゃない」(2024/11/30)で、どうやらかつての位置が変化しつつあるようなのだ。それが今年4月以降連載されている「イケてない?広島」の動機となっているようだ。

 この記事で初めて知ったが「札仙広福」という言葉があったらしい。しかし太田川の扇状地という立地的に見ても(後背地に山が迫っている)広島市は他と比べて差があるのでそもそもが過大評価だったのではと思わないでもない。

 しかしふるさとにはのんびりしてほしいと思うのは、脱出組の勝手な感慨なのかもしれないが。

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米大統領とバチカン・正しい告解とは

https://wien2006.livedoor.blog/archives/52402038.html

 このブログは西欧の動向を伝えていて意味深いので、今回は2つ全文引用する。

2024年11月13日

トランプ氏再選とバチカンのジレンマ

 米大統領選の結果を宗教的側面から見ていく前に、ハリス副大統領とトランプ前大統領の宗教的背景についてまとめておく。

 ハリス副大統領(60)は異なる宗教的ルーツを持つ家庭で育った。母親はインド系ヒンドゥー教徒、父親はジャマイカ系のキリスト教徒だ。そのため、ハリス副大統領は幼少期にヒンドゥー教とキリスト教の両方の影響を受けながら育った。ハリスさん自身は、キリスト教のプロテスタントに属しており、バプテスト教会に参加している。彼女は特定の教派に深くコミットすることはない。

 一方、トランプ氏(78)はプロテスタントの長老派教会(Presbyterian Church)で育った。彼は子供の頃から長老派教会で礼拝に参加していた。トランプ氏は現在 特定の教会に通っているわけではないが、近年では福音派(エバンジェリカル)信者の支持を集めており、選挙期間中には彼らとの関わりが深まったといわれる。参考までに、バイデン大統領はカトリック信者だ(「バイデン米新大統領の『信仰の世界』」2021年1月21日参考)。

 それでは5日の大統領選挙の結果をどうだろうか。FOXニュースとAP通信の調査によれば、トランプ氏はカトリック教徒の54%、プロテスタントなどのクリスチャン全体の60%の票を得た。これは2020年時のカトリック教徒支持をわずかに上回り、トランプのキリスト教徒支持層での強さを示している。反対に、ユダヤ教徒やイスラム教徒の有権者は大多数がハリスを支持した。

 ところで、カトリック教会は今回、信者にどちらの候補者に投票を、といった呼び掛けをしていない。なぜならば、司教会議内でも政治へのスタンスには温度差があったからだ。民主党のハリス氏は「中絶の権利」を推進し、トランプ氏の共和党は移民に厳しい政策をとっていたため、カトリック教徒にとってはどちらも受け入れ難いからだ。例えば、ワシントンDCのウィルトン・グレゴリー枢機卿は、「命の保護が基本的なテーマだ」と述べ、ニューヨークのティモシー・ドラン枢機卿は「いずれの候補者もカトリックの生命尊重文化を完全に具現化できていない」と指摘。司教会議のブロリオ大司教は、「盲目的な国家主義によって歪められた愛国心」を警戒するよう呼びかけた、といった具合だ。フランシスコ教皇は、米国のカトリック教徒には自身の良心に従うよう促しただけだ。

 宗教的な有権者にとって中絶問題は主要なテーマだ。ハリス氏は「生殖の自由」を全面的に支持する一方、トランプ氏は中絶の規制を各州に任せる意向を示した。これは、2022年に連邦最高裁が「中絶の権利は憲法上保障されていない」と判決を下したことに起因する。ワシントン・ポストの調査によると、トランプ氏は中絶規制に反対する有権者の28%、厳格な中絶反対派の90%から支持を集めた。

 選挙直後、米国司教会議は公式な反応を示していない。なぜならば、司教たちは今回の選挙で全体的に政治から距離を置いていたからだ。ヴィラノヴァ大学の神学者マッシモ・ファッジオーリ氏によれば、「カトリックの有権者が大きく分かれている」ため、司教たちは過度に政治的な姿勢を取らないように努めたからだと受け取っている。激動州(スイングステート)では、世論調査によるとカトリック教徒の50%がトランプ氏を、45%がハリス氏を支持している。

 バチカンニュースはバチカンの国務長官であるパロリン枢機卿の見解を大きく紹介している。パロリン枢機卿は7日、トランプ氏が新しい米国大統領に選ばれたことに対し、「米国内の深い分裂を克服し、全ての国民の大統領になってほしい」と要望している。そのためには「知恵」が統治者の最高の徳だと聖書から引用をしている。ウクライナ戦争や中東戦争などの国際紛争については「緊張緩和と平和構築」に貢献する役割を果たしてほしいと述べる一方、トランプ氏の移民政策にも言及し、トランプ氏が表明した中南米からの移民の大量追放計画に懸念を表明している。

 興味深い点は、トランプ氏が中国共産党政権には批判的な立場を取ってきていることを意識したのか、バチカンが中国との対話を優先した融和的な政策を実施していることに触れ、「バチカンの対話はあくまで教会の性格を持つものであり、政治的な相違を超えたものである」と明言し、バチカンはこの方針を維持し、中国との長期的な関係構築に取り組むために、対話を継続していく意向を強調していることだ。

 ちなみに、ローマ・カトリック教会の総本山バチカンと中国共産党政権は先月22日、両国間の司教任命権に関する暫定合意を4年間延長すると発表したばかりだ。欧米諸国では中国の人権蹂躙、民主運動の弾圧などを挙げ、中国批判が高まっている時だけに、バチカンの中国共産党政権への対応の甘さを指摘する声が絶えない(「『教皇の現実主義』は中国では通用しない」2024年10月24日参考)。

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https://wien2006.livedoor.blog/archives/52402083.html
2024年11月14日

仏教会の「安全な告解」新ガイドライン

 まず、3年前のショッキングなニュースを思い出して頂きたい。欧州最大のカトリック教国、フランスで1950年から2020年の70年間、少なくとも3000人の聖職者、神父、修道院関係者が約21万6000人の未成年者への性的虐待を行っていたことが明らかになった。教会関連内の施設で、学校教師、寄宿舎関係者や一般信者による性犯罪件数を加えると、被害者総数は約33万人に上るというのだ。バチカン教皇庁もその聖職者の性犯罪件数の多さに驚いたといわれている。

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▲CIASEのジャン=マルク・ソーヴェ委員長(CIASE公式サイトから)

 バチカンニュース(独語版)は2021年10月5日、仏教会の聖職者の性犯罪報告書の内容をトップで大きく報道した。「フランス、聖職者の性犯罪に関する新しい報告書の恐るべき数字」という見出しだ。公表された報告書は独立調査委員会(CIASE)が2019年2月から2年半余りの調査結果をまとめたもので、約2500頁に及ぶ。犠牲者の80%は10歳から13歳までの少年であり、20%は異なる年齢層の少女だ。ほぼ3分の1はレイプだった。

 日々の喧噪の中、フランス教会の不祥事を忘れかかかっていた時、同国カトリック教会司教会議は10日、告解と霊的指導に関する新ガイドラインを制定し、聖職者の性的暴力を防止するための追加措置を決めた、というニュースが入ってきた。これはルルドで開催されてきた司教会議総会で決められたもので、3年前のCIASEの勧告に基づいたものだ。同時に、司教たちは虐待被害者を支援するための基金に追加資金を提供することも発表した。

 ローマ・カトリック教会の「告解の守秘義務(Seal of Confession)」は、信者が神父に告白した内容を秘密にする義務であり、13世紀初頭、第4ラテラン公会議(1215年)で正式に施行された。1983年に改訂された現行の教会法典(カノン法)でも、告解における守秘義務が明記されており、神父がこれを破ることは聖職剥奪の対象となる。カノン法第983条で「告白された内容を神父が漏らしてはならない」と定められており、第1388条では、守秘義務を意図的に破ることがあれば自動的破門の対象となると規定されている。一方、カトリック教会の信者たちは洗礼後、神の教えに反して罪を犯した場合、それを聴罪担当の神父の前に告白することで許しを得る。

 ちなみに、カトリック教会では、告解の内容を命懸けで守ったネポムクの聖ヨハネ神父の話は有名だ。同神父は1393年、王妃の告解内容を明らかにするのを拒否したため、ボヘミア王ヴァーソラフ4世によってカレル橋から落され、溺死した。それほど聖職者にとって「信者の告解」の遵守は厳格な教えなのだ。

 今回の告解に関するガイドラインでは、赦しの秘跡を授ける際の条件が定められている。告解の際は、聖職者の個人的な部屋で行うことはできない。教会、告解室、特別に用意された告解室以外の場所での告解は、巡礼や病者の場合などの例外を除き禁止される。告解は基本的に昼間に行う必要があり、神父はその際に聖職者の衣服、少なくともストラ(聖職者の帯状の衣服)を着用しなければならない。特に感情が高ぶった状況での告解は避けるべきだ、といった具合だ。

 また、新ガイドラインでは、告解神父の教育に特に重点を置いている。告解の許可を与える前に、司教は神父を適切に訓練し、告解の務めに適しているかどうかを確認しなければならない。神父証明書には、告解を聞く許可があるかどうかが記される。許可が与えられた後も、神学的、心理的、法的側面に関する定期的な研修が必要とされる。

 同時に、告解の秘密の重要性について強調されている。この秘密は絶対的であり、破ることには厳しい教会法上の罰が科される。神父が告解の中で犯罪の疑いを知った場合、自ら通報したり他者に明らかにしたりすることはできない。しかし、告解者に自ら行動を起こすよう促し、必要に応じて教会や民間の当局に通報することを償いの一環として指導することはできる。赦しを拒否することは認められていない。

 ところで、なぜ司教会議はここにきて「告解に関する新しいガイドライン」を制定したのだろうか。それは聖職者の「告解守秘義務」が未成年者への性的虐待問題で大きなハードルとなってきたからだ。告解神父が聖職者の性犯罪を告解を通じて知ったとしてもそれを公にすることが出来ない。それが教会の性犯罪の隠蔽に繋がってきたからだ。CIASEのジャン=マルク・ソーヴェ委員長(元裁判官)は報告書の中で教会の「告白の守秘義務」の緩和を提唱している。なぜなら、守秘義務が真相究明の障害となるからだ。

 なお エリック・ド・ムーラン=ビューフォート大司教は2021年10月6日、ツイッターで、「教会の告白の守秘義務はフランス共和国の法よりも上位に位置する」と述べた。その内容が報じられると、聖職者の性犯罪の犠牲者ばかりか、各方面の有識者からもブーイングが起きた(「聖職者の性犯罪と『告白と守秘義務』」2021年10月18日参考)。

 ローマ・カトリック教会は今日まで「告解の守秘義務」を教会の重要な信条と位置づけ、神父が告解内容を漏らすことは許されないという厳格な姿勢を取り続けているが、児童虐待や重大犯罪が絡むケースにおいて、「告解の守秘義務」と社会的な義務との間で緊張が生じている。その意味で、フランス教会の今回の決定は、告解担当の聖職者への助言という性格が強いが、聖職者の性犯罪を久しく隠蔽してきた教会側がアンタッチャブルな「告解の守秘義務」に対して自ら再考する姿勢を示したものとして評価される。

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最近の考古学的発見

 今回は色々の報告があった。個人的には、サンピエトロ関係で、バルダッキーノ修復と修復アポロン像が気になった。

Exceptional Etruscan sarcophagi, urns seized from looters 

Amulet with Solomon spearing a demon found in ancient Hadrianopolis 

Gladiator knife handle found near Hadrian’s Wall 

Roman hobnailed shoe found in playground in Germany 

Roman road found under modern Old Kent Road in London 

Bernini’s Baldacchino shines again at St. Peter’s 

“Phantom” WWII ceramic coins found in Kyoto warehouse 

Irving Finkel on the oldest map of the world 

Skeleton assembled from multiple individuals thousands of years apart identified in Roman cemetery 

Dozens of amphorae from ancient shipwreck found off Sicily 

Roman “god pillar” remains found at open-air museum in Germany November 1, 2024

Inscription to ancient wrestler found in Turkey 

Tiny house frescoed like mansion in Pompeii 

Apollo Belvedere returns after 5 year restoration 

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最近のクリスチャン・トゥデイ情報

 うっかりしていたが、被団協のノーベル平和賞受賞という朗報あったが、これって、分裂しているはずなので、さてどちらが賞金もらうのだろう。被爆者が絶滅寸前となっていて今さら感あるが、だから受賞したのかなとも思う。

◎英国国教会の首席聖職者カンタベリー大主教が、教会関係者の児童虐待を巡る対応で辞意表明。

 https://www.christiantoday.co.jp/articles/34214/20241113/archbishop-of-canterbury-justin-welby-to-resign.htm

旧約聖書学者の関根清三氏、瑞宝重光章を受章

藤原聡著『姉と弟 捏造の闇「袴田事件」の58年』出版

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中国とバチカン

 このところ毎日新聞(デジタル版)でこの問題を取り上げている。

2024/11/2:「皇帝のものか神のものか」中国地下教会の受難

https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20241031/pol/00m/010/006000c?utm_source=article&utm_medium=email&utm_campaign=mailpol&utm_content=20241110

2024/11/10:中国とバチカン、司教任命権めぐる暫定合意を延長 それぞれに思惑

https://mainichi.jp/articles/20241022/k00/00m/030/246000c?cx_testId=79&cx_testVariant=cx_4&cx_artPos=7&cx_type=aiContextual#cxrecs_s

 記者はいずれも河津啓介・中国総局長

 中国の思惑とバチカンのそれがせめぎ合って、その狭間で苦悩し、血を流しているのは中国の地下教会の個々の生身のカトリック教徒である。「バチカンにとっては、欧米での教会離れに直面する中、推計1000万人とされる信者を抱える中国の重要度は増している。現在のフランシスコ教皇は訪中の希望を重ねて表明し、バチカン上層部も中国への常駐事務所の設置を目指すなど関係強化に前のめりだ」。これを後世の教会史家、迫害研究者たちはどのように表現するのだろうか。

 否、私が言いたいのは、現況から16世紀以上前の「迫害時代」のリアルを再現する視点が必要ではないか、ということだ。後世殉教者として称揚される者たちの、彼らが直面していた受難の実態は、彼らの手の届かないレベルでの駆け引きで招来された状況に捲き込まれてのものだった、という視角である。

 厳格な神学レベルでの今般の論点は、当然のこと、バチカンの現実的立場をありえないとみるだろうが、そこは曖昧にぼやかして、受難者の個別周辺事情を多弁することで「殉教者」像に当てはめ前面に立てて称揚する営みは、使い古された手法のように私には思われる。

 歴史的な「異端」像もそういった曲射的な視角から扱う必要があるだろう。

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