なお、上記月報に掲載したかったができなかった写真を載せておく。掲載できたのは、上掲のオスティア遺跡のIV.vii.4「アレクサンデルとヘリックスの居酒屋」Caupona di Alexander e Helix で、出土場所で現場保存されている白黒舗床モザイクで(但し、もちろん修復は入っているはず)、3世紀初期の作だが、それにはめ込まれている人名(ALEXANDER, HELIX)と同名の二人が別所でも登場しているのが下図で、なんと私はこの件をオスティアの案内板で初めて知った、という体たらく。
この白黒舗床モザイクは、縦3.8m、横6.9m、三世紀前半の作で(すなわち、期せずして前出オスティアのと同時代となる)、1998年にポッツオリ(旧プテオリ)北東、メトロ駅とparco Bognarの間で、Enel S.p.A.の配管架設工事のとき出土した邸宅からの出土品(通称、villa del suburbio orientale di Puteoli)。
【補論2】今頃になって、アレクサンデルとヘリックス関係でようやく核心的な論文を見つけることができた。C.P.Jones, The pancratioasts Helix and Aledander on an Ostian Mosaic, JRA, 11,1998, 293-298. いずれおいおい紹介したい(それに依拠して某学会の月報をいまさら修正するとしたら、アレクサンデルとヘリックスはパンクラティオン競技者とすべき、となる:根拠はよくよく見ると拳がグローブをしているように見えないから)。
【補論2への追記】それらしき論文を2,3点見つけた。ひとつは、学会発表論文集所収の以下で、だが国内図書館に所蔵はないので海外発注するとしたらかなり高額となる。たかが25ページの論文に2万円。昔だったら即座に注文していたが、研究費がない身ではそうはいかない。個人的にお持ちの方からの連絡があると有難い。C.Gialanella, Il mosaico con lottatori da una villa del suburbio orientle di Puteoli, in:a cura di F.Guidobaldi-A.Paribeni, Atti dell’VIII Colloquio AISCOM, Firenze, 21-23 febbraio 2001, Ravenna, 2001, pp.599-624.
実は私のささやかな悪戯心で、「あれぇ、あんなところに方形区画がぁ? 行ったことあるけどそんなものありませんでしたよ」との、昔観光したことある読者からの指摘を虎視眈々と待っていたのだが、残念ながら未だ全然反応ないので(ど、読者数が圧倒的に少数のせいでしょう、たぶん (^^ゞ )、知らなかったと思われるのがしゃくなので、今回しびれを切らして台座復元前後の写真を掲載しておく。最初の二葉が1981年のもの、最後の一葉は台座が復元された後の1998年のものである。引用典拠は以下:R.Rea, Studying the valley of the Colosseum (1970-2000):achievements and prospects, in JRA, 13, 2000, pp.93-103.
その一つが、紀元後6世紀、皇帝ユスティニアヌスの時代にあった、ということになっている。普通にはそれは「疫病」とされているが、残存している文書史料によると、どうやら疫病にとどまらず、いわゆる「核の冬」の特徴に酷似していた。そうなると当時原水爆はないので、想定されるシナリオは次の3つ。小惑星衝突、彗星衝突、そして火山噴火。その気になって、3年前に強制スリム化された書棚をチェックすると、それでも以下があった。デイヴィッド・キーズ(畔上司訳)『西暦535年の大噴火:人類滅亡の危機をどう切り抜けたか』文藝春秋、2000年(原著: David Keys,Catastrophe: An Investigation into the Origins of the Modern World, Ballantine Books,2000);石弘之『歴史を変えた火山噴火:自然災害の環境史』刀水書房、2012年;河合潤『西暦536年の謎の大噴火と地球寒冷期の到来 』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2014年。
今回のトゥリヌスの口上は、翻案者によると、古代ローマ時代の文筆家(生没年不明)による『奴隷娘たちとの生活』Vitae cum Selviris からの翻訳、ということになっていて、斯界では著名なA氏が写本と彼の訳を持ち込んできたことになっている。本物にみせるための道具立てとしてもっともらしく、それなりに詳しくおおむね正しい解説メモ付きであるが(その努力賞として星2つ)、本文はまあトンデモ本とでもいうべき偽書であろう。