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ヒトラーも薬物依存症だった

 2025/3/24のNHK総合「映像の世紀バタフライエフェクト」は「AI ヒトラーの隠された素顔に迫る」の初回放映だった。NHK+では一週間無料でみることできる。

 内容は、愛人エヴァ・ブラウンが16ミリフィルムに4時間残したヒトラーたちの映像に登場する人物をAIに他の映像を読み込ませて特定し、同時に読唇術で彼らの会話を復元しようとしたもので、なるほどこういう活用方法があるのかと感心しながらみた。

 それによって、総統に常に影のごとく寄り添っていた側近たちが解明され、その中に医者が2名含まれていたが、そのうち一名は、裸になるのを嫌った総統に対して、注射器で栄養剤などの投与で対応していた医師テオドール・モレルで、彼の診察記録から、ブドウ糖、ムタクロールなど80種類、その中にはアヘン系の依存性の強いオイコダールもあった。彼の診察記録から1944/7/20の暗殺未遂事件後にはヒトラーはより強力な薬物を頻繁に求めるようになったことも確認され、それが晩年の作戦に影響を与えないはずはなかった、と。

モレルのヒトラーへの投与記録

 後から調べたら、ウィキペディアではすでにこういったモレルの行きすぎた治療に関して報告がなされていて(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%AA%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A2%E3%83%AC%E3%83%AB)、知らないのは私だけだったようだ。

 私は以前このブログで、マルクス・アウレリウス・アントニヌスに同様な薬物が処方されていたことに触れたことがあったが(2020/3/25)、権力者には高揚感を得るためにも特権的にアヘンといった依存性の強い劇薬が使用されることも可能だったことを知ることとなった。

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なんと、オスティア遺跡中心部でミクヴァ発見?

2025/3/14:私にとって驚くべき報告がなされた。オスティア・アンティカ遺跡のど真ん中からユダヤ教の沐浴場が発見されたというのである。 イタリアのオスティア・アンティカ考古学公園は、2025年3月にイスラエル国外で発見された最古のミクヴェと思われるものを公表した(一般公開はまだのようだ)。この建造物が実際にミクヴェであり、推定年代が西暦3世紀から5世紀の間に遡ると確認されれば、ディアスポラで発見された最古のユダヤ人の儀式用浴場となる。

 https://www.timesofisrael.com/roman-era-jewish-bath-in-italy-may-be-oldest-outside-of-israel-points-to-vibrant-diaspora/の掲載写真によると、今回の発掘場所は劇場の左隣りの空き地のようだ。そういえばこの区画、最近訪問したとき発掘していたし、その一部の成果も公表されていた記憶ある。

写真の上部中央に劇場がみえている

 それにしても遺跡周囲を走る自動車道建設時に発見されたユダヤ教シナゴーグ遺跡(後1世紀創設)とはえらく離れていて、今回の発見は遺跡の中央部分で、そんなところにミクヴァが見つかるとはどうしても納得できないのであるが。換言するなら、シナゴーグ遺跡の方にその痕跡が見当たらないのが不自然ですらある。

ティベレ川湾曲の東のちょっと離れた遺跡印が劇場で、今回の発掘場所はその左側空き地か;
ユダヤ教のシナゴーグ遺跡は写真下部中央の遺跡印

 この沐浴場がミクヴァと断定されたのは、沐浴場に至る階段があり、その底からユダヤ教のシンボル、メノーラー(儀式用の燭台)とルラヴ(ヤシの枝)が刻印された無傷のオイルランプが発見されたからなのであるが、さて真相はいかに。

写真左の右下隅が沐浴場  写真右はその部分を拡大したもの

 沐浴場とユダヤ教的デザインのランプを結びつけての合わせ技一本、というわけでの結論だが、この場所の推定年代と関連付けて、さて…どんなものだろうか。

 ところで、ちょっと前の2022年の小論で書いたことだが、オスティア遺跡にあるのは現在のところ一見奇妙なことに、帝国東部発祥関係の宗教聖域ばかりで、帝国西部の宗教祭儀の現場は見つかっていない。これはある意味、宗教的に東部重視だった地中海世界の交易・流通網に即応していたとも捉えられる。その場合、西部は未だ植民地的な資源提供地レベルの、経済的・文化的・宗教的に無視していい劣位の位置づけに過ぎなかったというわけだろう。それなりの聖域を確保して専用構造物をなすことと、個人的にちんまり祀るのとでは遺構としての残存に雲泥の差が生ずる。それに、河川による土砂堆積とマラリア蔓延で放棄されたこの遺跡は都市として最終段階を示していることを、併せて考慮すべきだろう。

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も一つ驚いた:パリミッションの重たい調査報告

 今日クリスチャン・トゥデイから送られて来た情報が「パリ外国宣教会、所属司祭らによる性暴力の報告書を公表 日本でも被害訴える声」(https://www.christiantoday.co.jp/articles/34566/20250314/paris-foreign-missions-society-gcps-audit-report.htm)。

 どちらかといえばプロテスタント系のクリスチャン・トゥデイにしては例外的なカトリック関係の詳報と思えるが、明治以降、カトリック教会の日本宣教の主軸だった修道会でも例外ではなかったという現実は重たい内容で、しかもこの記事の最後に「関連記事」として以下が列挙されていて、いずれも既報とはいいながら・・・

 私は今、読書会で性善説的なペラギウスのお勉強をはじめているのだが、ペラギウスを異端に追いやったアウグスティヌスの原罪論に席巻された西欧キリスト教思想を見直そうというわけであるが、我と我が身を省みて、こういう情報に接すると性悪説に加担したくなってしまう。

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広島女学院大学の経営移管

 今日送られて来た中国新聞ニュースレターを見て驚いた。女学院大学(と幼稚園)の経営母体が山口の専門学校を運営しているグループに移管されると報じていた(中学・高校はこれまで通り経営)。しかも文科省がこの移管を承認するかどうかこれも不透明なのだそうだ。

 広島の私立大学の老舗だった女学院大学の今回の身売り話は、いよいよ大学冬の時代に突入という実感をもって私を襲った。

 実は、大学経営に関わっている知人とその話を1か月ほど前したことがあったのだが、イメージ低落を防ぐためにメンツを捨てて定員減をすることと、経済基盤として財源確保の手当をしておくことが肝要なのだが、それをしようとしなかった、ないしできなかったことが問題なのだと言っていた。先見の明が問われているわけである。

 そもそもそういう見識をもって学校経営するのが理事会の責任のはずなのだが、ありがちなことだが、選出された理事たちがなあなあの無難なお友達ばかりで固められたり、親身にかかわる姿勢が希薄になると(それは設立理念の消失に連動しているわけだが)、いくら頭数揃えていても身動きとれないのが現実なのである。

 公立化を模索していた加計学園傘下の千葉科学大学も沖縄の学校法人に移管されるそうである。文科省は移管に関してよもや門前払いはしないだろうが、いずれ募集停止・廃校となる可能性もあるわけだ。

 

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起きがけに見たNHK BSがよかった

 2025/3/17 9時から30分:「体感!グレートネイチャー 大地殻変動と古代文明:エジプト・黄金と宝石の絶景」。初回放映は今年の1/27。

 たった30分のドキュメンタリーだったが、私には大変納得できる内容だった。

巨大ピラミッドや巨石神殿、さらには黄金マスクや宝石の副葬品…実は、古代エジプト文明の誕生には、ナイル川周辺の大地殻変動が関わっていた!ナイル西岸・サハラ砂漠の絶景「白亜の彫刻群」に「黒帽子の山々」は巨石文明に関係が…!ナイル東岸の絶景「金脈の断崖」や「エメラルド神殿」には古代文明を彩った宝石に関係が…!さらに古代王国・随一の交易品となった謎の宝石の痕跡を求め、紅海に浮かぶ宝石島を目指す!

 文明発祥説に関して、日本では未だ教科書に四大河が生き残っていると揶揄されているのは知っていたが、私の中ではそりゃないだろうと思っても、ではなぜそこで先進文明がという疑問は残っていた。それを地球規模の地殻変動から、貴重な地下資源が露頭している有利さで指摘していて、私には示唆的だった。

 地球上には気候帯的に、ないし地質学的に、また病理学的に、他地域に比べて自然環境的に有利な状況に恵まれていた地域があって、そこでは労せずして(否、当初はそうだったにせよ、そっから先はかなり労働集約投入しなければならないのが現実で、それが先行文明へ発達する契機となったはず)、他がうらやむ僥倖に恵まれていた楽園だったのである。ピラミッドの石材は石灰岩で、金や宝石が出るのはマグマの上昇と接触した大地亀裂部分、といった具合。

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2025/3/11に見た「フロンティア」について

 以下の文章はある読書会参加者に書いたメールである。それに多少加筆して転送する。
+++++++++++++++++++
 実は先ほどまで21時から1時間、「フロンティア」で放映されたのが「ローマ:知ら
れざる地下世界へ」。
 
 掘ればかならず遺跡にぶつかるので新しい地下鉄は不可能とされてきたローマで、
2007年から3番目のC線が着工されました。そして予想通り至る所で遺跡にぶつかり、そ
れでも郊外に近いサン・ジョバンニ駅までは2018年に何とか開通したものの、そこから
市内中心部をコロッセオ、ヴェネツィア広場と横切るわけですが、完成年は未だ定かで
なく予算も大幅に増加してしまってます。このあたりはいかにもイタリアなんですが。

 この番組は何度も再放送されると思うので、ぜひ一度ご覧下さい。もちろん、NHK+でも3/18までだと、登録者は無料でみることできます。

 私個人的には、この放映で新しい情報が得られるかと期待していたのですが、これま
でフォローしてきていた知識の再確認で終わりました。新知見がなかったのは残念です
が、私のアンテナがずれてなかったことだけは確認できました。
 あとちょっと気になったのですが、ナレーションで数カ所おかしなこと言ってました
。たぶん翻訳ミスだと思います。

 そんな中でただひとつ偶然でびっくりしたのが、ヴェネツィア広場駅の工事でハドリ
アヌス帝(在位:117ー138年)建設の「アテナエウム」の平煉瓦の話が出てきて、煉瓦
製作印に執政官アプロニアヌスとパエティヌスの名前が押されていたことです(映像にもっともらしい丸印がついた平煉瓦が映ってましたが、あれが規格通りの大きさの煉瓦です)。

 それって偶然にも先日の会で出てきた執政官名ではないですか! ちなみに彼らは
123年を示しているので、ハドリアヌスがアテナエウムを建設したのは135年以降とされ
ていることともギリギリ年代的に整合しているわけです(興味ある方は、2019/5/19の
私のブログ「ハドリアヌスのアテナエウム発見」をご覧下さい:また兵舎についても以
下のブログで触れています;2019/8/14)。
 もっとも、平煉瓦の製作工房がドミティア・ルキッラの工房のそれだったかどうかには、番組では触れられてませんでしたが。
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これから一ヶ月余、講演準備に没頭予定

 これが生涯最後かもの講演を4/25(金)にすることになった。それで準備に没頭しないといけないので、このブログも手抜きになるでしょう。悪しからず。

 内容のポイントは「アルジェリア人アウグスティヌス」と、彼の生涯の「蹉跌と成功」をどう捉えるか、にあります。あ、 講演テーマそのものでしたね。

 本日、主催者から案内状完成報告がありました。興味ある向きは以下をご覧下さい:https://www.fmfj.or.jp/events/20250425.html

 今回の講演内容は以前発表したものの続きです。そもそもが決して自分の専門分野ではなく、通りすがりの野次馬根性での言及にすぎませんが、できれば予習しておいてほしいので、前作を案内状の「登壇者プロフィール」中の「人間アウグスティヌスを『告白』から探る」をクリックするとダウンできるように工夫していただいた。併せてご利用ください。

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お年玉郵便切手のこと

 リタイアして当方から送らないようになって数年経つ。その代わりメールだったら返事出しますから賀状にアドレス書いてと数年言ってきたが、そうしてくれる人はほとんどいないから、私の方から受領メールも出ないわけである。

 そんな中、今年は妻のも含めて届いた賀状は40あまり。期待もしていなかったのでお年玉のチェックもしなかったが、一昨日ようやく見てみたら、なんと4つほど記念切手があたっていた。こんな豊作は数の多かった昔でもなかなかなかったような気がする。

 これまでずっと収集してきているので、昨日さっそく郵便局に行ってきて受領したが、こんな僥倖は二度とない気がする。来年あたりでゼロになりそうな予感がしてならない。折角のお年玉切手だが、孫には切手収集の趣味はないので、さてどういう運命をたどるのだろうか。

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Quoraで「なぜ池上彰さんはネットで叩かれるのか」を読んで

私のメールソフトに表題の疑問が飛び込んできた。私はなんでそんなこと言われているのかなと思ったので、開いてみた。

「 (前略)

。。たまたま私の専門分野が絡む話でした。

判別材料となる情報をきちんと持っていらっしゃらず、完全に的外れな解釈で、どの学者も言わないような、事実とは異なることを話していて、私は唖然としました。

それ以来、 彼の話を聞くときに感じる違和感は、そういうことなんだなぁ。と気づきました。真実の一部や自己体験を交えながら、日本人が聞いたら信じるような、それっぽく聞こえるように話をしているだけと気づきました。

彼は自分の専門だけに絞って話した方が良いと思います。

(後略) 」

 この回答がいつも正鵠を射ているとは思わないが、テレビに毎日のように出演しているコメンテータの輩たちがあらゆる分野を熟知しているといわんばかりに、駄弁を弄している状況をおかしいなと思っているのと一緒なのかもしれない。

 だから解答者の「自分の専門だけに絞って話すべき」という指摘はよくわかる。

 しかしいわゆる「専門分野」の常識がいつも正しいとは限らないので、実際話は簡単ではないのである。人の生死を分かつはずの原子力村の常識が「想定外」という一言で全然ずれていた事例や、輪島付近が地震多発地帯から外されていたという事例からも明らかだろう(私は、人口密集地を相手にしたほうが予算獲得に有利という現実判断から、過疎地ゆえに研究者たちの視野から消えていたせいでは、と密かに思っているが、この「素人談議」は熊本地震の場合に、果たして適合しているのだろうか、自分ながら確信はない)。いわば、意図したないし意図せぬ誤報・偽報が当然のように蔓延するのが常態の、SNSレベルでいつも問題となる庶民感覚に訴える手法の問題点は確かにあるが、時に素人談議が核心を突いていて、パンドラの箱の蓋を開ける場合もないわけではないのが、問題をややこしくしている。

 私のように「専門分野」の常識を疑うのが習いとなっている者にとって、事実と思われる核心を突いた発言・着眼点は大切にしたいのだが、いわゆる学界人の常識・偏狭さには辟易しつつ、彼らから見たらきっと私のほうが偏屈なのであろう。最近以下を読んで改めて思い知らされた。

 山田望「ペラギウス派と古代東方神学:具体的自由のとしての思想」『福音宣教』79−1、2(2025年1月号:pp.55-61、2月号:pp.55-61)。

 この連載、22回を予定しているそうだ。彼がそれを全うできることを祈らざるをえない。もう30年近く昔の1997年発行の彼の主著を読書会でテキストにできないかと、発売元の教文館に在庫を尋ねたら、なんと50冊は残っているとの返答があって、売れていない(そしておそらく図書館所蔵でも読まれていない)という現実と、未だ読書会でテキストにできるという僥倖の狭間で、私は微妙な心境であった。

 研究がAI的なレベルでいいのか、という解決されざる疑問をこれからもしばらく自問してゆかねばならない。いや、紙媒体の限界を破りたいとこのブログに時間を割いて書いているわけなのだが、はたしてその効果はあるのだろうか。ブログにくらべ紙媒体が後世に残る確率は確かに高い(たとえ読まれなくとも)。その点ブログの消滅は一瞬である。その危うさはやはり問題である。

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最近の考古学的発見

◎ イタリア・サレルノの工事現場から前20世紀のヴェスビオ噴火の際の人や獣の足跡発見 2025/1/28 https://www.artnews.com/art-news/news/bronze-age-footprints-vesuvius-discovered-italy-1234730934/

◎ 古代ローマの超精巧なミニ南京錠、ドイツで出土 2025/1/30:https://www.livescience.com/archaeology/romans/1-600-year-old-roman-padlock-with-spring-mechanism-discovered-in-germany-and-its-tiny

◎ ロンドンの事務所地下からローマ時代最初のバシリカ出土 2025/2/15:https://www.thehistoryblog.com/archives/72433

◎ 後4世紀の金糸と紫糸の織物が、2020年フランスのオータンの初期キリスト教会墓地から出土。2025/2/13:https://www.thehistoryblog.com/archives/72416

◎ フランス・オルレアン出土の呪詛板  2025/1/15:https://www.livescience.com/archaeology/curse-tablet-found-in-roman-era-grave-in-france-targets-enemies-by-invoking-mars-the-god-of-war

◎ 時代は違えどトイレ話二点

 (1) 中世の「呪詛板」がドイツのトイレの底から発見  2023/12/16:https://www.livescience.com/archaeology/medieval-curse-tablet-summoning-the-devil-discovered-at-the-bottom-of-a-latrine-in-germany

 (2) 7ー10世紀の朝鮮新羅の皇太子専用の水洗トイレ 2025/2/14:https://www.thehistoryblog.com/archives/72427

  付録:慶州東宮跡地遺跡出土のトイレ 2017/09/26:https://japan.hani.co.kr/arti/culture/28573.html

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